病院建設リスク管理
 

院内感染リスクは、経営リスク

2017年01月09日

 

病院建築は、いうまでもなく「安全・安心」を前提に計画されますが、実際の運営においては、院内感染などの医療事故と隣り合わせの厳しい環境に置かれています。


日本では、院内感染による死亡が推測で年間約16500件と言われています。


院内感染は、患者やその家族に多大な苦痛を与えるばかりでなく、病院の信頼性という最も重要な社会的価値を損ない、さらにDPC※1)のもとではその疾病治療費は病院の持ち出しとなるため、経営の持続的な安定性を大きく揺るがす問題となります。

あるデータによれば、MRSA※2)に感染することで、一症例当たり入院日数が約70日増加し、余分な診療費は約400万を超えると言われています。


「院内感染は、業務・運営において起こる問題であり、建築的な対応では防止できないのでは?」

という印象があるかもしれませんが、実は様々な建築的対策手法があります。
その導入には、計画初期からの院内全体での検討と調整、合意形成というプロセスを踏まえることが重要です。

 

院内感染とは、感染源、感染経路、感受性体(患者)の3つの要素があります。
感染対策においてもっとも考慮しなければならないのは感染経路の遮断ですが、免疫低下患者の感染防止においては、感染源の隔離と感受性体の保護も大切であり、これらは建築による対策が重要です。


これら3つの要素に対する建築的な対応としては、

(1)感染経路の遮断
接触感染、飛沫感染、空気感染それぞれの伝播を防止するために、病院各部門の配置を検討し、感染源の拡大を防ぎ封じ込めるためのゾーニングや、清潔、汚染エリアの区画、汚染物の搬送や集積ルートや動線の交錯を避けた計画をします。
感染防止の基本である、手洗い設備の適切な配置計画も重要なポイントです。


(2)感染源の隔離
感染源とは、主に感染症患者から発生する汚染物であり、それらを隔離し、封じ込めることで、危険因子の拡大防止をはかります。
上記の(1)で検討したゾーニングに沿って、必要な諸室(消毒・滅菌関連諸室、汚染物の保管廃棄処理諸室、医療廃棄物庫等)を計画します。


(3)感受性体(患者)の保護
隔離診察室・隔離病室やクリーンルームの設置、前室設置などの処置により清浄度を管理し、感染患者を安全に隔離することで、感受性体(特に日和見患者)の安全をはかります。
それらの諸室は、換気回数、空気清浄度、陰圧や陽圧の室内圧制御、気密性などの個別性能の設定をどうするかが重要です。


それぞれについては、さらに建築的詳細部分の処置も重要となります。
清掃性・防汚性の高い仕上げ材の選定はもちろんのこと、埃だまりにならないカーテンレールや家具頂部の処理、床面の清潔を保つための配管の処理、電気関係コードが床を這い回らないコンセントの位置の検討など、細やかな配慮が必要になります。

また、飛沫感染には距離が重要ですので、病室だけでなく、透析ベッドなどもその間隔について、適切な距離(2m以上)の確保が必要です。

さらには、パンデミックに迅速に対応できるように、通常とは別の出入口やトリアージ対応ができるスペース等の確保など、緊急時に可変性のある対合ができることも重要です。

こうした対策は建築費のアップにつながりますが、前述したように院内感染で発生するコストを考えると、経営の持続性を阻害する問題の長期的なリスク管理としては必要な対策であるといえるでしょう。


以上のように病院建設事業において、院内感染防止の建築的対策は重要な検討テーマです。
どんな感染患者まで受け入れるかの対象を明確化し、それに対して実績のある確実な建築的手法を、適切な箇所に過不足なく対応することが大切です。

慣例や思いこみにとらわれた科学的根拠のない感染対策で、過剰なコストがかかっている事例も見受けられます。

院内感染防止について、建築的な対応について何をどこまでやればいいのかをプラスPMに、是非一度ご相談ください。


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(※1DPC

DPC(「包括支払方式」)とは、「Diagnosis Procedure Combination」の略で、「診断病名」と「医療サービス」との組み合わせの分類をもとに、1日当たりの包括診療部分の医療費が決められる計算方式です。

 従来の診療行為(項目)ごとに計算する「出来高支払方式」とは異なり、入院患者さんの病名や症状をもとに、DPC(診断群分類)に基づいて評価され、日当たりの金額からなる包括評価部分(注射・投薬・処置・検査・画像診断・入院基本料 等)と出来高評価部分(手術・麻酔・心臓カテーテル・内視鏡検査・リハビリ 等)を組み合わせて医療費を計算する日本独自の新しい定額払いの会計方式です。

 

(※2MRSA感染症:

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌。抗生物質メチシリンに対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌であり、多くの抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌です。

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