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東京オリンピックによる資材価格高騰を、ECI手法によって建設費用を抑制できました.

東京都生活協同組合連合会


東京都生活協同組合連合会(以下 東京都生協連)は東京都下の地域生協、職域生協、大学生協、医療生協、グループ共済生協など77生協をとりまとめている団体です。会員生協の概況は、組合員総数 2,883,789人、組合員総出資金 654億 8,266万円、総事業高 3,577億 8,218万円 。その東京都生協連が所有する生協連会館の45年振りの建て替えをプラスPMがCMを行いました。今回は、東京都生活協同組合連合会 野口孝氏にプラスPMの建設コンサルティングを導入した経緯とその効果についてうかがいました。
2017.02

高齢者向け住宅などを備えた複合ビルへ、生協連会館を45年振りに建て直し.

ー 今回、東京都生協連が建てた建築物の概要と、プラスPMに依頼した業務の内容を教えてください。
 
野口:東京都生協連では生協連会館ビルを45年ぶりに建て直しました。新会館は、東京都生協連事務所のほか、生協店舗、サービス付き高齢者向け住宅、貸し会議室などを備えた多目的ビルです。
 

  会館はおかげさまでほぼ予定スケジュールと予算のとおりに竣工できました。また6〜9階のサービス付き高齢者向け住宅部分は竣工後3ヶ月で満室率75%超と順調な滑り出しです。
 プラスPMには、建設の企画段階から竣工に至るまで幅広いコンストラクション・マネジメント業務を依頼しました。建物の概要は次のとおりです。
 
項目

内容

建物概要

名称:「東京都生協連会館」

9階建て、鉄筋コンクリート、延床面積 6,322.55㎡

アクセス:中央線中野駅南口から徒歩5分、丸ノ内線新中野駅杉山公園出口から徒歩8分

建物用途

東京都生協連の事務所、生協店舗、協力団体の事務所、サービス付き高齢者住宅、グループホーム 、貸し会議室、地域交流スペース


1〜2階 : 生活協同組合コープみらい コープ中野中央店

  3階 : 東京都生協連事務所、貸し会議室

  4階 : きょうされん事務所、地域交流スペース、

  訪問介護・居宅介護支援センター、訪問看護ステーション、

  食事サービス(厨房)施設

  5階 : グループホーム(パルシステム東京)

6~9階 : サービス付き高齢者向け住宅(コープみらい)

 
 プラス PM に依頼した業務の概要は、次のとおりになります。

主な依頼

詳細

企画、収支計画、設計事務所・ゼネコンの選定、コスト削減提案、工事管理支援など

建設委員会支援業務コンサルティング

・シニアビジネスマーケティングなど

事業計画企画支援業務委託

・基本計画案作成 ・テナントとの各種協議支援 ・事業収支計画等策定支援など

コンストラクション・マネジメント業務

・設計事務所選定支援 ・設計コスト管理 ・ゼネコン選定支援(ECI方式) ・コスト削減策の提案 ・テナント工事区分策定支援 ・補助金獲得支援 ・工事管理支援など


建築とシニアビジネス、両方に詳しいプラスPMとの出会い

— 生協連会館の建て替えを決めた経緯と、プラスPMにコンストラクション・マネジメント(以下 CM)業務を依頼した経緯をお聞かせください。
 
野口:会館の建て替えを決めたのは2010年でした。以前の旧生協連会館は1971年(昭和46年)の建物で、当時すでに築年が38年を超えており老朽化が進んでいました。また当時、会館前の公道の拡張計画が進んでいた経緯もあり、生協理事会で討議した結果、道路拡張に合わせて用地を買い取り、大きく新しい生協連会館を建てた方がよいという結論に至りました。
 その後、東京都生協連および会員生協の代表者を含めた生協の各組織から成る「建設委員会」をつくり、新しい生協連会館はどうあるべきか討議を重ねました。その結果「従来と同じただの会館を建てるのでは意味が無い」「生協の理念を具現化した、生協らしい会館、生協会員と地域住民の役に立つ会館を建てるべきだ」という結論に至りました。ではそんな「生協らしく、人々の役に立つ会館」とは何か、それはやはりこの時代、「福祉関連、シニア向け施設だろう」という結論になりました。
 しかしここからが問題で、東京都生協連にはサービス付き高齢者向け住宅など福祉ビジネスに関する知識、ノウハウはほぼ皆無でした。 これはどこか専門家の力を借りなければいけない、そう感じていたとき知人を通じて「ここなら建築とシニアビジネスの両方に詳しいよ」という紹介でプラスPMのことを知りました。
 早速連絡を取って説明を聞いたところ、さすがプロだけあり確かな実績と知識を持っていることが短時間の面談だけでよく分かりました。なので、まずは設計の前段階の企画段階をご支援いただくことにしました。
 

2010年12月

発案、建設委員会発足、数案の計画検討

2011年3月

東日本大震災の影響で一時中断

2011年7月

プラスPMへ建設委員会支援を依頼

2011年10月

建設委員会再稼働、プラスPMへ事業計画構想支援を依頼

2012年11月

基本構想(基本計画)を開始

2013年12月

事業化決定、プラスPMへコンストラクション・マネジメント業務を依頼

2014年3月

設計事務所選定、設計開始

2014年11月

基本設計に基づくゼネコン選定(ECI方式)、(第一優先候補者を選定)

2015年2月

既存建物解体工事着手

2015年3月

ゼネコンとの工事請負契約締結

2015年7月

本体工事着手

2016年10月

竣工

 


プラスPMの評価シートで、スムーズに設計事務所を選定

— 企画段階ではどのように作業を進めたのでしょうか。
 
野口:企画段階では建設委員会の定例会合にプラスPMにも同席いただく形で、建設企画案、収支計画案を策定しました。 具体的には「どんな建物を作りたいか、作るべきかを、生協の言葉ではなく建築の言葉で書き記す企画書作り」「融資を通じて調達した建築費用を、確実に返済していくための収支計画書づくり」「福祉ビジネスに乗り出すための周辺法制度、競合状況、市場状況の学習」「願望ではなく現実を見据えたマーケティングによる計画作り」などを行いました。

6F-9F サービス付き高齢者向け住宅
『コープみらいえ中野』

  大きくはプラスPMから、福祉ビジネスのこと、建物作りのことを「イロハのイ」から学んでいった形になりました。この企画段階の共同作業を通じて、プラスPMの仕事品質の高さが確認できました。企画段階のみならず、設計、施工から竣工に至る、「新会館づくりの最初から最後まで」をプラスPMに支援いただくことを決めました。
 
— 企画を終えて、次の設計事務所はどう選定したのでしょうか。
 
野口:まずプラスPMから新しい建物の基本構想図、イメージ図が提示されました。
 イメージ図といっても、空想に基づく理想絵図ではなく、収支計画に基づいて建物の階数、福祉施設の部屋数にいたるまで綿密かつ現実的な基本計画図ができました。またプラスPMからは難解な設計図ではなく、わかりやすい表現とともにパース図も提示されたので、建設委員会のメンバーにも完成後のイメージが容易に共有できました。
 その後、関連者を含めた協議により、設計事務所計4社を最終候補として挙げ、東京都生協連に来て事前に作成いただいた計画案をもとに、コンペによるプレゼンを行いました。
 プレゼンに先立ちプラスPMからは、10段階評価の項目を記した、設計事務所の相互比較のための評価シートが提供されました。このシートに沿って建設委員会のメンバーが4社のプレゼンを評価した結果、『A設計事務所(仮名)』が最も評価が高かったのでこれに決めました。
 『A設計事務所』は、私たちが求めている要件を予算内で過不足なく満たしている点が高評価の理由になりました。中には個性的で目を引く提案をしてきた事務所もありましたが、一見華やかに見ても、全体を見てみると「福祉ビジネスのための必要条件を満たしていない箇所」があるなどアンバランスでした。プラスPM提供の評価シートによりバランス良く設計事務所を評価することができました。

1F-2F コープ中野中央 店舗

 設計事務所の選定を終えて、基本設計を進めている傍らで、ゼネコンを選ぶための準備を始めました。これも設計事務所の選定と同様に、候補ゼネコンを選び、総合評価を行い、プラスPM作成の評価表に基づいて比較検討する形で行いました。しかし、このゼネコン選定の最中に建築コストの大幅な増大につながる思わぬ事態が発生しました。それが、2020年のオリンピックの東京開催決定だったのです。
 

東京オリンピック決定による資材価格の高騰に対して、プラスPMから提案されたECIとは!?

— オリンピック東京開催の決定が新会館の建設にどのように影響を与えたのでしょうか。
 
野口:オリンピック東京開催が決まったということは2020年までの間、資材価格や建設費用が高騰することも既定路線になったということです。もちろんオリンピック開催は日本にとって慶事ですし私も国民の一人として大いに喜びましたが、新会館の建設費用という観点から見るとなかなかの痛手でした。
 実際それから毎週のように建設資材や人手の価格は高騰していきました。プラスPMと共に策定した建設費用上限(予算の天井)も見直しをせざるを得なくなりました。この建設費用の継続高騰という予期せぬ事態に対応するべく、プラスPMからはECIという手法が提案されました。

— ECIとはどんな手法でしょうか。
 
野口:ECIとはEarly Constructor Involvementで、直訳すれば「建設会社の早期巻き込み」となります。設計の早期段階から建設会社も巻き込むことで、根本的なコスト削減を実現する手法とのことでした。
 

プラスPM ここがポイント!

建設コストについて、いちばん情報を持っていて目先が利くのは、実は建設会社です。いわゆる『蛇の道は蛇』という言葉がぴったりきます。その建設会社を設計の早い段階から巻き込むことで、建設会社が持つ智恵、情報、ノウハウをコストダウンに生かしていく、それがECIの考え方です。
 このECIを実現するために、まずプラスPMは設計事務所に交渉して、基本設計図書を相当に詳しく書いてもらいました。通常、設計図は基本設計と実施設計の二段階に分けるもので、綿密なコスト算定は実施設計図がないとできません。しかし、それではECIに間に合わないので、基本設計図の段階で相当に詳しい情報を盛り込むようにしたわけです。

 
 このときもプラスPMの交渉力と設計知識が役立ちました。 プラスPMはコンサルタントとはいえ、自社にも一級建築士を有しているなど建築設計の知識と実務能力があります。こうした能力の裏付けがあるからこそ、設計事務所に具体的に「ここまでならできるはず」と頼めるわけです。

3F 東京都生協連 事務所

 また、建設会社の確実な協力を担保するために、総合評価型入札の際は最終決定したゼネコンA社について「第一優先候補者」という扱いにしました。通常は総合評価型入札で一社を決めたら、その一社に発注するようすみやかに契約書を交わします。しかしこのときはECIを確実に遂行するために入札の後、実施設計が終わり、精算見積をして請負金額を確定するまでは「第一優先候補者」、つまり「九分九厘、その会社に発注する。しかし契約書はまだ交わさない」という扱いとしたのです。ECIを確実に行うには契約武装が必要だという考え方に基づいた措置でした。
 
— 契約を請負金額が確定する以降に締結すればECIが確実になるというのは、理屈の上では分かるものの、これを建設会社に承諾させるのは一仕事のような気がするのですが。
 
野口:たしかにそのとおりです。いくらコスト抑制が必要とはいえ、建設会社を一方的に詰めるようでは、良い建築は実現できません。この点はプラスPMも同じ考えでした。
 プラスPMおよび東京都生協連は建設会社に対し、「上限費用(予算の天井)は設定する。しかし建設会社に損をさせることのないよう、プラスPM側、東京都生協連側も全力で智恵を出す」という姿勢で建設会社と交渉を重ねました。建設会社にもその趣旨を理解いただき、最終的に承諾を得ることができました。
 そして設計を終え、2015年に本工事を開始。まず旧会館の解体に着手しました。しかしここでも予期せぬ事態が起きました。
 

予想を超えるアスベストと地中障害物でも、コスト情報と工期遅れを最小限に

— どんな事態が起きたのでしょうか。
 
野口:大きくは「予想を超える量のアスベスト」「予想を超える大きさの地中障害物」が出てきたことです。
 まずアスベストですが、旧会館は昭和46年竣工の建物なので多少のアスベストがあることは予測していました。しかし実際に解体を始めると、予想をはるかに上回る箇所と量でした。結果としてアスベスト除去費用が予定よりかさみコスト圧迫要因となりました。
 次に「地中障害物」ですが、旧会館は建設当時の図面が残っていなかったので、基礎杭を始めとする地中障害物の分量が不明でした。そこで建物の規模に合わせ常識的な量を見積もり、それを基に撤去費用を算定しました。しかし実際に掘り返してみると予測と異なる基礎杭があり、これを除去するために、工期とコストの両方に影響が及びました。
 
— 不測の事態によるコスト上昇と工期遅れの懸念は最終的にどういう結果になったのでしょうか。
 
野口:まずコスト面については、上物の建築費用をやりくりすることで、予定していた上限価格の範囲に押さえられました。
 次に工期についてはアスベストの処理と残存杭の撤去により、解体工事が予定より2ヶ月遅れましたが、全体工期を調整し、結果として一ヶ月の遅れですみました。これは実質的に工期通りに終わったと言って良いと思います
 こうして不測の事態も乗り切ることができ2016年10月、ついに東京都生協連の新会館ビルが竣工しました。

 

テナントとの協議の支援を受け、複雑なテナント入居をスムーズに

— このほかプラスPMには「テナントとの契約締結の助言・支援」、「テナント工事区分に関する負担割合の話し合いの支援」も依頼したとのことですが、具体的な内容は?
 
野口:まず「テナントとの契約締結の支援」についてですが、新会館には東京都生協連事務所として使う部分はわずかで、その他、多くのテナントが入居します。そのテナントと交わす賃貸契約内容、管理規則、重要事項説明、管理費、修繕積立金などに関して助言を依頼しました。
 次に「テナント工事区分の負担割合の話し合い」ですが、これはテナントの要望で行う設備工事・内装工事等に要する費用を東京都生協連とテナントがどういう割合で費用分担するかを協議したものです。

— テナントの要望で行う内装工事等なら「費用は全額テナント負担、退去するときは原状復帰」と定めればよいのでは。
 
野口:一般的にはそうかもしれませんが、今回の新会館ビルでは事情が少々異なりました。
 東京都生協連のビルでは大半のテナントとは25年以上の長期入居契約です。この場合テナント側も25年以上使うのだからということで、建設途中の段階で内装や設備について様々な要望を出してきます。しかしそれを無制限に受け入れると予算がオーバーするので一つ一つの要望を吟味し、東京都生協連が負担する箇所、テナントが負担する箇所というように負担割合を定めなければいけません。
 この割合分担の設定も論理的根拠や落としどころの模索がなかなか大変なところですが、この点もプラスPMに算定根拠の助言からテナントとの初期交渉まで幅広く支援いただけたおかげで、テナントとの話し合いを順当に進めることができました。
 


建設過程におけるさまざまな障壁を、乗り越えられた

— 今回の新会館建設プロジェクトを振り返り、プラスPMへの評価についてお聞かせください。
 
野口:まず新会館の運営ですが、現在のところ非常に順調に推移しています。サービス付き高齢者向け住宅は入室率が75%を超えるなど好評です。3階の貸し会議室もこの近辺では供給不足だったようで利用は非常に好調です。
 

4F 地域交流スペース 『えんがわ』

また3Fの畳敷きの地域交流スペースは地域のお母さん方などの交流の場として好評です。地域に貢献する生協の理念を形にすることができました。営業面は当初の計画通りに推移しています。融資の返済も収支計画書どおり進められるでしょう。
 新会館の企画から竣工に至るまでには、東京オリンピック決定による建設費高騰、旧会館建物のアスベスト、残存基礎杭など多くの障壁がありました。これら障壁をクリアーし、予定した予算と工期に準じて無事、竣工に至ったことは、プラスPMの支援によるところが大きいと考えます。
 特に対ゼネコン、対テナントの難しい交渉のときには、役割分担が重要でした。 交渉は、単独で行うのと複数で行うのでは結果の得やすさが異なるので、これは心強いところでした。
 私も65歳となり定年を迎えることとなりました。今回の新会館の建設は自分にとって最後の大きな仕事です。この大仕事を、プラスPMと共に満足行く形で達成できたことを大変うれしく思っております。

ー 現在、大きな建設プロジェクトに着手しようとしている企業・団体の建設担当者に向けて「先行ユーザーとしてのアドバイス」などあればお聞かせください。
 
野口:今回、新会館の建築に携わって痛感しましたが、途中、予期せぬことが次々起きます。専門家の支援なしには、予算通り工期通りに竣工できていたかどうかわかりません。
 しかし一方で、専門家が不可欠といえ、大きな建築は何十年に一回だけしかないことなので、そのためだけに社員として雇用するわけにはいきません。しかしコンストラクション・マネジメント(CM)企業への依頼という形をとれば、建築プロジェクトの間だけ専門家を一時雇用し、自分の右腕として使うこともできます。
 今回はプラスPMというプロフェッショナルに素晴らしい支援をいただきました。 プラスPMの社内には、建設事業に関するさまざまな専門家がいます。この専門家集団を一時雇用できるというのは、大きな建物を建てる時に極めて理に適ったやり方だなと、自分で経験してあらためて実感しました。
 プラスPMさん、この度は素晴らしい助力をいただきありがとうございました。今後何かまたご相談することがあるかもしれませんが、引き続きよろしくお願いします。